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童話みたいな小短編 


童話みたいな、などといいながら、
子供が読むには難しい内容です。多分。

優しいお話を書こうと思ったんです。
なんだか、震災のニュースばかりで、心がすさむという声をきいたので。
それでもわたしが書くものは、どうしてもこう幸せなだけ、優しいだけではいられないのだけれど。

どうか、これを読んでくれた人達の心が、少しでも救われますように。



 子供が。

 子供が、一人。
 ぽつん、とただ、立っていた。
 目を真っ赤に腫らして。
 涙を既に流しつくして。
 すりむいた膝は汚れたまま。赤い血は、もう固まって。
 焼け跡が広がる街で。
 焦げた臭いがはびこる街で。
 ただぼんやりと、立っていた。

 崩れて、鉄筋が覗くコンクリートのマンション。
 散らばるガラス。
 潰れた木造建築からは、折れた木材が槍のように道路を向いて。
 瓦が落ちたその先の、端の焦げた一冊の絵本。
 遠くで聞こえる悲鳴の声。
 足跡が残る、つぶれたうさぎのぬいぐるみ。
 それら全て。
 子供は眺めているのに。
 瞳に写る、それだけで。

 ぴょこり、と。
 ぬいぐるみが、潰されたうさぎのぬいぐるみが起き上がっても――かわらずに。
 ただぼんやりと、立っていた。

 起き上がったぬいぐるみは、きょろきょろと辺りを見回して、子供の姿を見つけると、やぁ!と右手を上げたけれど。
 その子はやっぱり、ただただ立っているだけで。
 しょんぼり。
 うなだれたぬいぐるみは、それでもめげずに、近くにあった絵本を掴む。

 うんしょ、うんしょ。

 ぬいぐるみには大きな絵本。
 引きずりながら、その子の前へと持って行き、どう?と足元で。
 まるで紹介するみたいにして、表紙を見せた。

 子供の視線が、ゆっくり、ゆっくり、下を向いて。
 ぬいぐるみが、絵本を開く。


 焼かれていたのは表紙だけのようで。
 まるで古い本のように、ページの端が、茶色くなった本。
 柔らかなピンクで描かれたハートマークと、その側に立つ、小さな小人。

『とくり。とくり。
 暗い洞窟の中。
  心が、音を立てています。』

 ぬいぐるみは喋ることができないから。
 自分の右手で、文字を辿って。
 子供に絵本を読ませます。

『とくり。とくり。
 その音に引き寄せられるようにして、暗い暗い、洞窟の先。
 小人は心の前へとたどり着きました』

『やぁ!僕は小人、遠い遠いところから旅をしてきたんだ!』

『旅人というだけあって、
 小人はまんまるになるまで荷物をつめた、大きなリュックを背負っています』

『おや、君、無口だね、それとも僕が怖いのかな?大丈夫!僕は怪しくなんか無い、ただの小人の旅人さ!』

 子供が、地面にぺたりと座ろうとして。
 地面にガラスの破片が見えたので、ぬいぐるみは絵本を放り出し、慌てて、ガラスを脇に除けました。
 でも。
 ぶぎゅ、と。子供がそのまま座るので、ぬいぐるみはお尻に敷かれてぺったんこ。
 子供は気付かず、落ちた絵本を手に持って。
 小さく、震えた。
 擦れた、声で。

「そこまでいって、こびとはきがつきました。こころのおとが、かなしいおとだと、いうことに」

 読み上げる。





 

「おやおや?どうして泣いているんだい?悲しいことがあったのかい?」

 小人が心に問いかけます。
 けれど、心は何も答えてくれません。
 小人は困ってしまいます。
 誰かが泣いているのを見ると、自分も悲しくなってしまうから。

 だから、小人は精一杯に笑顔を浮かべて、

「やぁ!何を悲しんでいるのかは知らないが、まずは食事だそうしよう!君、ねぇ君、いい匂いがしないかい?」

 にんまりわらって、鼻で息を吸い、背中に背負った大きなリュックを揺らします。

「するだろう?ふふふ、ここにくる途中にね、見るからに美味しそうなりんごの木があってね!」

 小人が背負ったリュックを下ろして、開いてみれば、なんとまぁ。
 リュックの中身はりんごが1個。
 他にはなーんにも入っていません。

「あんまり美味しそうだったから、もってこようとおもったのだけれど、他の荷物で入らなくって」

 置いてきちゃった!そういって小人はくすくす笑って、りんごにがぶりとかぶりつきます。

「うーん、おいしい!ほら、君も食べようよ!こんなに大きなりんごだからね、一人で食べるには大きすぎて!」

 とくり、とくり。
 けれど心は、悲しく繰り返すだけで、小人はまた、困ってしまって。

「そうか!」

 けれど諦めません。
 りんごの革をナイフで切って、小人でも持てるサイズに、真っ白な果肉を切り取って。
 お空に向かって、口を開いたその上で、果肉をぎゅっと押しつぶしました。
 ぶしゃ、と果肉が潰れて、金色の果汁がこぼれ出て。
 お口にいれるつもりでしたが、あんまり上手にいかなくて、気付けば体がびっしょびしょ。

「あはははは!」

 けれども小人は明るく笑って、自分の体からする、りんごのあまーい匂いに小躍りして。

「ほら、喉が渇いているなら果汁を飲みなよ!僕はあんまり上手くできなかったけれど!」

 言いますが、やっぱり心はとくり、とくり。悲しげに音を出すだけで、

「そうか、君は手がないもんね!…ありゃ、口もないのかい?」

 小人は心の上へとよじのぼり、りんごの果汁を浴びせてやりました。
 おそろいだね!と小人は笑って言いました。
 心も小人も、りんごの甘い匂いがします。

 それでも。

 心は、やっぱり、悲しく鳴っているばかり。

「暗いからかい…?君がこんな暗いところにいるから、暗いのが好きだとおもったのだけれど」

 だんだん、小人も自信がなくなってきてしまいました。
 カチカチカチ、と石を鳴らして、焚き火をします。
 優しい炎が、あたたかく二人を包みましたが、それでも。

 それでも、心は、悲しく泣いているだけで。

「どうしたんだい?ねぇ、君、僕にどうしてほしいんだい――?」

 小人はもうどうすればいいかわからなくなってしまって、そっと、右手で心に触れました。
 そうしたら、右手が凄く冷たくなって、小人はびっくり。

「さむいのかい?あぁ、でも、焚き火を起こしているのに!」

 小人の服をあげようか、考えましたが、心と小人ではサイズが合わずに、着せてあげることも出来ません。
 それでも、心が悲しく鳴るのを、とめたかったから。
 小人は優しく心を抱きしめました。
 小人の体がみるみるうちにつめたくなって、

 そうして。

 そうして、ふっと暖かくなったのです。
 心がようやく泣き止んで。

 幸せそうに、鼓動を鳴らしはじめました――








 そこで、絵本は、終わって。
 子供は、ぺたり、と地面に座り込んだまま、絵本を閉じて。

 擦れた声で。
 口を開いて。






 そうして。

 子供の耳に、届く声。
 遠く、自分の名を呼ぶ声に。
 大声を出して。

 いくつも、いくつも、涙を、流して。

おかあさん、と。
 泣き声を上げた。

つぶれたうさぎのぬいぐるみはもう動かない。
 優しく子供を見守って。

 やがて、母親に抱きしめられたその子は、母親の胸に顔を埋めて。

 とくん、とくん。

 聞こえる鼓動が、優しくて。
 暖かくて。

おかあさん、と呼びながら、
 涙を流して、笑っていた。
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2011.03.13 Sun. 18:09 -edit- Trackback 0 / Comment 0

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