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ありふれた、or not 


キン――
 響き渡る澄んだ音。
おー。
 どこか間抜けな男子の――野球部員たちのあげる声。

 流行の歌と。
 ジャージで踊る、チア部の掛け声。

 冷えた廊下。
 緑色のリノリウム。
 冷たい風が、膝下を走り去っていく。


 あたしとかいちょーの物語はそんな、高校入ってはじめての10月の、ありふれた放課後から。


 本のモノローグみたいには、赤くない。
 薄暗さ忍び寄る夕焼け。
 10月なのによく冷えた日。
 スカートの下にジャージはいて。
 はやくも伸びてきた指定セーターの袖に指を隠して、腕を擦って。
 たしかそう。
 明日の小テストを愚痴ってた。

 そもそもからして帰宅部で、勉強なんか縁の無いあたしが放課後学校に残ってたのもそれがため。
 実力テストの点数がちょっとまじやばくて人に見せらんない類の点数で、ちょっとガンバロウ、なんて思ったんだ。
 家かえってから勉強なんてできないから(集中力とかの問題)、図書室借りて。
 でもやっぱり無理。あたしに勉強とか無いわー。
 どうせ小テストだし。
 なんて。
 帰る途中。

 ぽろ、と。
 こぼれた音がして。
 あたしは気持ち俯いてた顔をあげた。

ぽ、ん――

 ピアノの。
 旋律なんかじゃない。ただ気まぐれに触れてみたような。
 音楽室。僅かに開いた扉。
 軽音楽部は部費をカラオケ代に飛ばして、或いはライブのチケット代に飛ばして、実際活動なんてしてないのに音楽室部室にしてるとかマジどうなの。
 なんて、クラスメートが愚痴っていたのを覚えていたし、このガッコの吹奏楽部が楽器の練習をする音も、あたしは聞いたことが無くて。
 だからその音は妙に異質にあたしの耳へと届いた。
 リズムのない音。
 そのくせ、やめるつもりはないらしい。
 しっかりしめたはずの蛇口から、水滴がぽとぽとと滴るような頻度で、繰り返されるピアノの音。

「…うぜー。弾くなら弾けよ」

 小声で呟いて、扉を開く。
 音楽室のその中で、ちょっとびっくりした顔の男子が一人。
 ピアノの前にたって、人差し指と中指で鍵盤にふれて。

ぽろん

 ずれた和音。


――弾くなら弾きなよ。

 あたしが言って。

――弾けないんだ。

 ちょっと照れたように、顔を背けて。
 かいちょーが、そう言った。

 ふーん。で。今までなら終わってたけど。
 音楽室にたった一人で佇んで、鍵盤と戯れるてるなんて。
 なんとなく、寂しそうで。
 だから。

「えー、猫ふんじゃったとかも?」
「あー、あったなー、なんか音楽の授業の前とか、合唱練習前とか誰かが絶対やってた」

 明るく聞いた。かいちょーは鍵盤に視線を落とす。ちょっと眉間に皺を寄せて。
 懐かしー。でもあれあんま好きじゃない――
 なんて呟きながら、それでも。

「どうだっけ。ね、こ、ふん、じゃ、ったー?」

 細くて器用そうな指先が、たどたどしく鍵盤を押す。

「そーそー、それそれ。ってかなんで嫌いなの?」

 あんなの好きも嫌いもないと思うんだけど。
 ねこ、ふん、じゃっ、たー。
 二度目はほんの少し滑らかに。

「僕猫好きだからね。ね、こ、ふんじゃー、ふんじゃー、ふんじゃったー」
「ってなにそれちょー適当じゃん!」

 続けた歌に思わず吹いた。
 え、違う!?なんて驚くかいちょーがなんかツボって。

 古ぼけた机の並ぶ音楽室。
 二人だけしかいない教室で、お腹を抱えて笑うあたしと、うろたえた顔のかいちょーと。

 あたしとかいちょーの物語はそんな、高校入ってはじめての10月の、ありふれていない、放課後から。
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2011.05.05 Thu. 12:57 -edit- Trackback 0 / Comment 0

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